シロアリは、アリという名前からアリの仲間なのではと思われがちですが、実はアリとは全く異なり、ゴキブリに近い害虫です。
ここでは、そんなシロアリの特性について、ご紹介します。
シロアリの住みか
シロアリには主としてヤマトシロアリ、イエシロアリがいます。
ヤマトシロアリは乾燥に弱く、自分で水を運ぶ能力がないため、家屋の場合いつも湿り気のある台所の流しの下、風呂場、植木台などに巣を造ります。
イエシロアリは水を運ぶ能力があります。
シロアリの一生
シロアリは寿命の長いことで知られています。
女王アリ、王アリの寿命は10~10数年に及ぶ。一方、職アリ、兵アリの寿命は、長くても数年といわれている。女王アリは、1日に数百個の卵を産む。
シロアリはアリではない
シロアリとは、シロアリ目の不完全変態の昆虫で、形態や生活様式がアリに似ているため、シロアリと呼ばれていますが、分類的にはゴキブリやカマキリに近い昆虫の総称です。
シロアリが他の生物と大きく違う点は、大多数の生物がデンプンを分解してエネルギーを得るのに対して、シロアリは樹木の大部分を占めるセルロースを分解してエネルギーを得ているという点です。
シロアリは世界で約2000種、日本では17種知られていますが、大部分は野外性の種類で、木造建築物を食い荒らすのはごく一部にすぎません。
日本で家屋害虫といわれるシロアリは本州全土から北海道の一部にまで分布しているヤマトシロアリと、静岡県以南に分布しているイエシロアリの2種です。
シロアリ と クロアリ の区別
シロアリの羽アリとクロアリの羽アリは似ています。
羽アリを見かけた場合、下のイラストを見ればシロアリか、クロアリか区別が付きます。
種類 | シロアリ | クロアリ |
---|---|---|
触覚 | 数珠状 | くの字状 |
胴 | ずんどうタイプ | くびれている |
羽アリ | 羽の長さが4枚ともほぼ同じ | 前の羽が後ろより大きい |
働きアリ、兵隊アリ | 目のない種類が多い 生殖能力がないメスとオスが半々 特徴的な兵隊アリを持つ | 複眼と単眼がある メスだけで生殖能力がない 兵隊アリがいる種は少ない |
交尾 | 羽を落とした後、ペアとなり巣の中で | 羽のあるままでおこない、後にオスは死ぬ |
営巣 | メスとオス共同でおこない、巣の中には女王と王がいる | メスのみでおこない、巣の中には女王のみ |
生態 | 不完全変態 卵 ~ 幼虫 ~ 成虫と生長する | 完全変態 卵 ~ 幼虫 ~ サナギ ~ 成虫 |
シロアリの2大ファミリー
ヤマトシロアリ
林の中で枯れ木や枯れ枝を移動させたとき、その下の地面に体長3~5mm程度で黄白色の虫が集団で歩いていれば、それがヤマトシロアリの職アリです。
移動させた木を割ってみるとその中に数千から3万匹程度の個体がファミリーをつくっています。
ファミリーは多数の職アリとその10パーセント程度の数の兵アリ、体長11~15mmと大きい女王アリと7mm程度の王アリのペア、さらに時として翅 (はね) のある羽アリと呼ばれる多数のアリから構成されています。
しかし、特に巣と呼ばれるものをつくりません。
一般にシロアリは乾燥に弱く、太陽光線を嫌うため、どうしても外部に身をさらさなければならない場合には、アリ道と呼ばれる土と分泌物をかためて作ったトンネルを利用します。
もし家の基礎にそれらしい道があり、その中を白っぽい虫が歩いていればシロアリと思って間違いありません。
ヤマトシロアリの羽アリの群飛は、4~5月頃の正午前におこなわれ、この時期にきれいな透明の翅が生えた黒っぽい虫が、小さな穴から続々と姿を現します。
それを見て体の色が黒っぽいため、アリだと思って安心していると家はボロボロにされてしまいます。
イエシロアリ
イエシロアリはヤマトシロアリより少し大型で、特に女王アリの体長は、大きいものでは30mmに達する場合があります。
ファミリーを構成する個体数は、特に大きなものでは100万匹以上にもなります。
したがって家屋の被害はヤマトシロアリの場合よりはるかに速く甚大です。
ヤマトシロアリとの見分け方は、兵アリを見ると見分けやすいです。
イエシロアリがやや下ぶくれの丸い頭をしているのに対し、ヤマトシロアリは細長い形です。
羽アリの群飛は6~7月の夕方に多く、数万匹の女王及び王候補が一斉に飛び立ち、その後地上に降りて雌と雄のペアとなり、交尾してから巣作りを開始します。
イエシロアリは水を運ぶ能力があるため、活動範囲は非常に広く、アリ道を作って100m以上遠征することも珍しくありません。
特にマツ材には目がなく、ある程度乾燥したマツの薪などを長時間積んでおくのは、イエシロアリの新女王と新王に新居を提供してあげているようなものです。
厳しい階級制度
シロアリの社会は厳しい階級社会です。
大別すると生殖階級 (女王アリと王アリ)、副生殖階級 (女王アリと王アリの候補)、職アリ階級、兵アリ階級に分けられます。
生殖階級は文字通り幼虫を生み出す女王と王で、アリやハチでは1回の交尾で十分に以後の産卵に備えられるが、シロアリの雌にはその能力がありません。
そのため、つねに雄といっしょに生活しています。
職アリ階級は、シロアリファミリーの 90~95% 近くを占めるいわゆる働きアリで、食物の採取や巣作り、巣の掃除、生殖階級・兵アリ・幼虫へ食べものを運びます。
また、兵アリ階級は外的防衛がおもな仕事で、そのために頭部は特殊な形態に発達しています。
また、自分では食べものを採取できません。
シロアリ対策
シロアリを1匹でもみつけたら要注意!
きっと家のどこか、近辺にシロアリの巣があるはずです。早急に退治する必要があります。 シロアリの増えるスピードは驚くほど速く、退治が遅れれば遅れるほど、被害も大きくなります。
また、シロアリは長生きする虫としても有名で、女王アリにいたっては30年近く生きる場合があります。
ちょっとやそっとではいなくなりません。
あなたの家は大丈夫?
秘伝!シロアリ早期発見法
- アリの通り道はないか?
シロアリは、地面などにトンネルを作って家屋に侵入するので、建物の基礎や土台の表面にトンネル状のアリ道がないか確認します。 - アリ土はないか?
シロアリは、木材の割れ目や継ぎ目に土などを盛り上げ、その内部を巣にします。 - 羽アリはいないか?
4~5月頃の昼間、食われた木から黒い羽アリ (ヤマトシロアリ) が飛び出したり、6~7月の夜、黄褐色の羽アリ (イエシロアリ) が電灯に飛んできたら、きっと近くに巣があるはずです。
秘伝!シロアリ防御法
- 床下や建物周囲に不要な木材を置かない
シロアリが家屋を食害する場合、ふつう縁の下からはじまります。
そこでまず家を建てるときには十分整地し、木の根やコンクリート枠の廃材などもすべてきれいに取り除いておきましょう。 - 床下をなるべく乾燥状態を保つ
シロアリは乾燥を嫌うので、縁の下を乾燥状態に保つために換気扇などを使って風通しをよくしましょう。
秘伝!シロアリ撃退法
(薬品を使って駆除する)ピレスロイドを有効成分とした薬剤を使います。
これは安全性が高く、速効性に優れていて、嫌な臭いが少ないので非常に使いやすい薬剤です。
シロアリに直接噴霧したり、家の土台、床板、壁板などにも全面噴霧して使用します。
家庭での害虫対策
シロアリを完全に撃退することは非常に困難なため、日頃から注意して予防対策を立てておくことが肝要です。
しかし、被害を受けていると思われる場合には、とりあえず市販の薬剤で対処して、早急にシロアリ駆除の専門家に相談することをおすすめします。
シロアリの生態雑学
シロアリの階級分化の不思議
シロアリの職アリは成虫ではなく未成熟な個体で、そこから兵アリや副生殖虫が分化していきます。
つまり、巣の中の大多数を占める職アリの分化が、成虫である兵アリや生殖階級の存在によってコントロールを受けているのです。
例えば、ふつう全個体数の約10%程度いる兵アリを全部取り去ると、やがて職アリの10%程度が兵アリへと分化しはじめます。
このような状態を支配しているのは、階級分化抑制フェロモンと呼ばれる化学物質であると考えられています。
このようにシロアリは、女王アリや王アリを取り除いても、新たな個体がそれらにとって変わる可能性があります。
また、数十匹のシロアリの存在が巣の再生にもつながることがあり、まことに厄介な害虫といえます。